国会は二十二日午前、超党派議員が提出した「伴侶動物復刻及び遺伝情報流通法案」を賛成三百九十六、反対五十四の大差で可決した。通称”ペット復刻法”は、半世紀前に絶滅した ニホンオオカミ やジャパニーズ・テリアなど計 七十七種 の遺伝子アーカイブを公共財と位置づけ、デジタル配列を安全なDNAカプセルにエンコードして配達する「 DNA郵便 」を合法化する内容だ。これにより、飼い主は自宅の端末から希少種のゲノムデータを発注し、到着後ただちに最寄りの認定ラボに持ち込めば、 最短四十八時間 でクローン個体の 胎芽移植 が始まる。
政府は背景として 高齢化とペットロス の深刻化を挙げる。昨年、独居高齢者の三一%が「過去の犬種を再び飼いたい」と回答する一方、市場に流通する犬種の 遺伝的多様性はわずか二割 に縮小していた。農水省は「復刻法で 遺伝的ボトルネック を解消し、伴侶動物の健康と飼い主のQOLを両立させる」と強調する。 国家ゲノム銀行 が保有する十六ペタベースの配列データは、施行初年度に限り 無償提供 され、二年目以降は一匹当たり三万五千円のライセンス料が課される予定だ。
だが、 倫理面の議論 はなお噴出している。動物福祉団体は「クローン個体の 免疫脆弱性 や 終生飼養の責任 が軽視される」として慎重審査を要求。環境省所管のバイオ倫理審査委員会は、配列受領から二十四時間以内に可否を判定する”高速審査枠”を設けたが、AI判定アルゴリズムの透明性が不十分との批判が続く。さらに野生復帰を前提としない室内飼育が広がれば「種の復活」が単なる愛玩ビジネスに転落しかねないとの懸念もある。
市場は早くも反応した。大手ペットテックのアニマライフ社は、移植後の成長過程をホログラムで可視化する”クローン育成ダッシュボード”を年内に提供すると発表。保険各社もクローン特有の疾患リスクをカバーする専用プランを準備中だ。一方、既存のブリーダー団体は「血統保存の文化を破壊する」と強い危機感を示し、独自ブランド価値の維持に動く。
絶滅犬が再び街を歩く日 が来るのか――その光景が希望となるか、あるいは 生命観を揺るがす警鐘 となるかは、社会がこの新郵便をどう扱うかに懸かっている。


