壁には、扉がある。
たいていの場合、扉は正面にない。隣にある。裏にある。あるいは床の下にある。「アイデアが出ない」というブロックは、考え方より、問いかけの角度の問題だ。
問いを変えれば、世界が違って見える。
前提を壊す問い
1. 「当たり前」を一つ選んで、それを逆にするとどうなるか
すべての創造は「当たり前の転覆」から始まる。タクシーは客が呼ぶもの——それを逆にしたのがUberだった。「逆にする」という操作だけで、新しい世界が開く。
2. これが100倍の規模になったら、何が変わるか
スケールを変えると問題の性質が変わる。小さな違いが、大きなスケールでは決定的な差になる。逆もまた然り——巨大な問題を「1000分の1に縮めたら」何が見えるか。
3. もし失敗が絶対に許されるとしたら、あなたは何を試みるか
恐れが創造を殺す。リスクを取り除いた状態でのアイデアは、普段の思考とは全く別の場所に現れる。「失敗してもいい」という仮定は、脳の検閲官をオフにする。
4. あなたが最も嫌いな解決策は何か——そこに何かが隠れていないか
直観的に却下したアイデアには、理由がある。その理由の中に、本質的な制約や前提が隠れていることが多い。嫌いな答えを掘ると、問いの構造が見えてくる。
視点を移す問い
5. 5歳の子どもなら、この問題をどう説明するか
簡単に説明できないものは、まだ理解できていない。子ども向けの言葉に翻訳しようとすると、自分が何を分かっていて何を分かっていないかが明確になる。
6. 最も批判的なユーザー(または顧客)は、この案に何と言うか
自分の案を愛している間は、弱点が見えにくい。最も厳しい目を持つ人の視点を借りることで、見えていなかった穴が現れる。
7. 反対の立場から——これが最高の案である理由を、悪魔の代弁者として述べよ
「これは駄目だ」と思っている案の、もっともな理由を探す。その作業は、元の案の欠点だけでなく、意外な長所も発見させる。
8. これを今から100年後の人間が見たとき、何が時代遅れに見えるか
未来の目から現在を見る。今「当然」と思っていることの多くが、時代の制約に過ぎないかもしれない。制約の正体が見えると、突破口が現れる。
つながりを探す問い
9. まったく関係ない分野の専門家なら、この問題をどう解くか
外科医ならどうするか。映画監督ならどうするか。料理人ならどうするか。専門的な問題解決のパターンは、分野を超えて移植できる。異質な視点の移植が、クロスオーバーを生む。
10. 自然はこの問題をどう解いているか
バイオミミクリーの発想。新幹線のフロントデザインはカワセミの嘴に学んだ。Velcroはゴボウの実に学んだ。自然は何億年もかけて問題を解いてきた。その解答集は、まだほとんど使われていない。
11. これを音楽で表現するとしたら、どんな曲か
抽象的な思考を別のモダリティに変換する。ビジュアル、サウンド、身体感覚——問いの形式を変えると、答えの形も変わる。
12. 全く異なる時代(たとえば江戸時代)に同じ問題があったとしたら、どう解決されていたか
現代のリソースや技術を一切使えない状況で考えると、本質的な解決策が浮かび上がる。「道具」ではなく「原理」で考える練習になる。
スケールと境界を問う
13. この問題の「本当の顧客」は誰か——自分が想定している人ではないかもしれない
誰のために解くのかを問い直す。ペルソナが変わると、問題の定義が変わる。問題の定義が変わると、解決策の空間が変わる。
14. この問題を解決しない選択肢には、どんな価値があるか
解かないことが、時に最善の解答になる。放置することで生まれる価値、あえて不完全にしておくことの利点——否定の論理を積極的に検討する。
15. 問題の境界はどこか——境界を広げると何が見えるか、狭めると何が見えるか
定義された問題の枠は恣意的だ。「この製品の問題」を「この業界の問題」に広げると、全く異なる解決策が生まれる。逆に「この画面の問題」に狭めると、見落としていた細部が現れる。
エネルギーを変える問い
16. もし無限のリソース(時間・お金・人材)があったとしたら、最初に何をするか
制約を外した思考は、本当にやりたいことを明らかにする。その「本当にやりたいこと」を制約付きの現実に落とし込むとき、創造が生まれる。
17. あなたが今、最も興奮しているアイデアは何か——たとえ「実現不可能」であっても
理性が「無理」と言う前に、感情が「これだ」と反応するアイデアがある。その直観を信頼してみる。実現可能性は、後で考えられる。
18. 「もっと簡単に」するとしたら、最初に捨てるものは何か
複雑さはアイデアの敵だ。スティーブ・ジョブズは「ボタンを一つにする」という執念でiPhoneを生んだ。最初に捨てるものを選ぶことが、設計の始まりだ。
19. これを5分で実行できる最小版にするとしたら、どんな形か
完璧を待つと、何も始まらない。最小の試みを定義することで、思考が動き出す。MVPの発想は、創造のブロックを解く鍵になる。
20. あなたが今この問いに答えていない本当の理由は何か
すべての問いの前に立ちはだかる最後の問い。恐れか。完璧主義か。答えが分からないことへの不安か。ブロックの正体を見ることが、壊す最初の一歩だ。
問いの使い方
20の問いを順番に解こうとしなくていい。
詰まったとき、ランダムに一つを選んで、そこから考え始める。「これは関係ない」と思っても、強引に適用してみる。関係ないと思った問いほど、思わぬ突破口になる。
問いは道具だ。使ってこそ意味を持つ。
考えるための問い
- あなたが今「詰まっている」問題は何か——その問いの角度は、変えられるか
- 20の問いの中で、最も「答えたくない」ものはどれか——なぜか
- 「創造性がない」という言葉を、あなたはどこで学んだか
参考文献
- ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス、1988年)
- エド・キャットマル、エイミー・ワレス『ピクサー流 創造するちから——小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』(ダイヤモンド社、2014年)
- トム・ケリー、デイヴィッド・ケリー『クリエイティブ・マインドセット——想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』(日経BP、2014年)
- ミハイ・チクセントミハイ『フロー体験——喜びの現象学』(世界思想社、1996年)
- アレックス・F・オズボーン『想像力を高めよう——ブレインストーミングの生みの親によるオリジナル版』(産能大出版部、1958年)