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共通テスト、AI正答率0%の問題だけに——「人間にしか解けない」を毎年つくり直す出題委員会

初年度の平均点は42点だった。2033年の大学入学共通テストは、AIが解けた問題を全て捨てるという方式で作られた。人間にしか解けない問題を探し続けた出題委員会が、最後に直面したのは「では人間とは何の残りものなのか」という問いだった。

#教育 #入試 #AI #人間性 #共通テスト

2033年1月16日、大学入学共通テストが実施された。この日出題された38問は、作問された12,000問のうち、AIに解けなかったという理由だけで生き残った問題だ。全科目平均点は42点。廃棄率は99.7%——316問に1問しか残らなかった計算になる。

文部科学省が2029年度から準備してきた「AIふるい方式」の初適用である。主要生成AI10種にそれぞれ1,000回ずつ解かせ、正答率が5%を超えた設問は自動的に廃棄される。出題委員会の作業部屋には、AIが答案を吐き出し続けるモニターが並ぶ。


「私たちがここでやっているのは、AIが解けなかったという事実を探す作業です」。国語科出題委員長の宮下和彦・元県立高校長はそう語った。廃棄と生存を繰り返すうちに、「解けなさ」には経験的に3つの型があることが分かってきたという。資料同士が矛盾し正解が定まらない問い、身体経験がないと判断できない問い、そして問い自体の妥当性を疑わせる問い。

実際に出題された1問はこうだ。「祖母の遺した古い漬物石の重さを、あなたはどう量りますか。数値を使わずに答えなさい」。予備校各社は模範解答を出せずにいる。


副作用も表れている。予備校には「AI耐性対策」講座が誕生した。生徒は自分の答案をAIに解かせ、AIと同じ答えなら書き直す練習を積む。人間らしさが、模倣を避ける技術として練習されるようになった。手元にAIを何種類も走らせられる家庭とそうでない家庭で、対策コストはすでに分かれ始めている。

「人間性を機械の余りものとして定義することを、我々は制度として承認してしまった」と、哲学研究者の遠藤久美子・都内私立大学教授は批判する。一方、教育経済学者の坂本淳一氏は「定義が毎年動くのは、制度が働いている証拠です」と擁護する。


2034年度の出題方針は、審議会で越年しても決まっていない。宮下委員長は最後にこう漏らした。「来年、AIがあの漬物石の問題も解いてしまったら、次は何を残せばいいのか、まだ誰も知りません」。

AIが明日それも解けるようになったとき、あなたの中から静かに外れていくのは、何だろうか。

未来妄想新聞

参考文献

  • 新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社、2018年)— AIの読解限界と人間の読解力を実測で対比した研究
  • Jerry Z. Muller, The Tyranny of Metrics(邦訳『測りすぎ——なぜパフォーマンス評価は失敗するのか』みすず書房、2019年)— 指標の目的化が現場を歪める構造(グッドハートの法則)の理論的整理
  • Michael Polanyi, The Tacit Dimension(邦訳『暗黙知の次元』ちくま学芸文庫)— 言語化できない知の領域を扱った古典

作中に登場する資料(本記事内のフィクション、2033年時点で成立している想定の文書)

  • 中央教育審議会「人間固有能力の測定への転換について(答申)」(2031年・想定)— 入試における測定対象の転換を提言した政策文書
  • 文部科学省「AIの学習・教育利用に関する調査研究」(2029年度・想定)— 生成AIの学力試験正答率調査の想定根拠資料
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